ここ数年「メンター」という言葉が、マスコミを中心に一般的に話題にのぼるようになりました。企業に於いては、人材育成の手段の一つとして「メンター制度」を導入するところが増えています。その対象となる人材の範囲は広く、新入社員に先輩社員がメンターとなって相談にのるというものから役員が次期役員候補者の相談役としてメンタリングをするレベルまで様々です。また、昨今では、女性の活躍推進を目的としたメンティ(被支援者)を女性に限定したメンター制度の運営も多く見られるようになりました。
教育界に於いては、特に学校では、チューターと呼ばれている学習を中心として生徒の相談に応じる支援者の存在がありますが、更に、様々な領域(モチベーション・生活・キャリアプラン・等)をもカバーするようになり、メンターという呼称を活用しだしています。
メンタリングとは、経験や知識の豊富な者(メンター)が未だそうでは無い者(メンティ)に支援/指導することを意味しています。しかし、本来のメンターの役割は、単なる知識や経験の伝達ではありません。未だ本人(メンティ)も気付いていないような“強み”を引き出し、メンティの成長を支援するというのが本来の役割です。そして、メンティが成長することによってメンター自身が成長するという活かし活かされる「共育」の関係性が構築されることが望まれます。そのような関係性が構築できるマインド、知識、スキルを身に付け、日常活動の中で実践できる人材を育成することによって、お互いに高め合える関係をつくる文化を組織に定着させることが可能となります。
一方、世界を見てみると、20世紀後半から21世紀にかけ、私たちは、情報化社会の名の下に、グローバリゼーションや市場原理主義の影響を受け、各分野(ビジネス・政治・教育・等)で競争社会を構築してきました。そして、この競争社会の影響は、短期間に世界中の全ての人々に大きなインパクトを与えました。その中でも過度な競争が環境破壊や人間性破壊に繋がり、現在の危機状態をつくっていると言えます。
上述のメンタリングの考え方(メンターシップ)は、このような危機状態にある社会を大きく改善させる未来思考のソリューションであると考えています。まずは、国内で、家庭、学校、企業、団体、等に於いてメンターシップを普及させることを重要課題としていますが、行く行くは、国際社会に於いて、「競争社会」を「共創社会」に変えていくことが私達の究極の使命であると考えています。
代表理事 長谷川恵一